■建築研究資料 |
No.144号(2013(平成25年)8月) |
<概要> |
平成20-22 年度の建築基準整備促進事業「超高層建築物等の安全対策に関する研究」で開発した長周期地震動の予測、作成手法について、2011 年東北地方太平洋沖地震及びその余震の観測データを用いて、手法の検証を行い、いくつかの改良を加えた。 改良の第一点は、提案式をMw=9のマグニチュードまで適用可能としたことである。観測値と評価値との比較で、規模が大きな地震について、何らかの頭打ち効果を導入する必要があることがわかり、Mw の自乗項を追加した。 もう一つの大きな改良点は、2 つの震源域すなわち東側の太平洋プレートと南西側のフィリピン海プレート (南海トラフ)で起こる地震とで、地震動の距離減衰特性に違いがあること、また、関東地域内での地震基盤が深い観測点では、この2 つの震源域間で、増幅率および地震動の伝播に関係するサイト係数に違いがあることがわかり、それを反映したことである。 これらの改良を加えた推定式による値と2011 年東北地方太平洋沖地震の各地での観測記録とを比較し、改良式がより良く観測値を再現していることを確かめた。 さらに、地震調査研究推進本部の昭和南海地震を対象とした2012 年版長周期地震動予測地図との比較も試みた結果、両者に大きな相違がないことも確認している。 このように、改良式に一定の有効性があることが確認できたため、これを連動地震にも適用することを試みた。対象としたのは、南海・東南海・東海の3連動地震で、元々内閣府が設定した震源モデルを、鶴来他(2005)が、いくつかの矩形の断層に置き換えたものである。関東平野、濃尾平野、大阪平野の主要観測地点での地震動を推定した。提案式は観測データに基づいているため、観測値と評価値との乖離度合いを意味する回帰誤差も計算しており、これを標準偏差と考えて、スペクトル値と群遅延時間それぞれで、その分を上乗せした平均値+標準偏差(μ+σ)レベルの地震動も作成した。 さらに、これらの地震動に対する超高層、免震各建築物の応答レベルの試算を行った。 超高層建築物は、S 造について高さ100mから250mの6棟(純ラーメン構造、ブレース付きラーメン構造、制振部材付きラーメン構造)、RC造について高さ100mから250mの7 棟で、すべて曲げせん断棒置換モデルで応答解析を行っている。 *1 (独)建築研究所 *2 (株)大崎総合研究所 *3 清水建設(株)技術研究所 *4 東京理科大学理工学部 *5 (株)日建設計構造設計部門 *6 鹿島建設(株)建築設計本部 *7 清水建設(株)設計本部 |
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