パソコンを用いた都市交通計画情報システムの開発
浅野光行, 武政 功, 中村英夫
建築研究報告 No.121 March 1989 建設省建築研究所
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<概要> |
都市圏の交通特性の的確な把握が最も基本的かつ重要な事項となる都市交通計画の分野においては,必然的に大量のデータを収集,蓄積し,分析を行うこととなる。このデータは,都市圏の交通体系のマスタープラン策定時のみならず,日常の交通計画業務においても活用ニーズは高いが,データの参照,解析等に多くの時間と労力を要しているのが現状であり,データの効率的活用のための環境整備が急務となっている。
本研究においては,大型計算機と比してユーザーインターフェースに優れアクセシビリティの高いパソコンを用いて,計画担当者自身の手で都市交通計画に関する各種のデータの蓄積,分析及び表示を統合して行い得るシステムを開発している。
はじめに研究の背景と目的を明らかにし,第2章で都市交通計画関連のデータ運用の現状と問題点及びそれらを解決するためのシステム開発の動向について整理している。現存しているシステムの大部分は,その機能が特定目的のために特化しており,また,情報処理機器に関する専門的知識を利用者に要求するものが多く,高度の情報処理知識を有しない交通計画担当者が,計画業務全般に汎用的に利用し得るシステムを求めようとした際には,入手が困難であることが明らかとなった。
第3章は本研究の中核をなす部分である。まずはじめに,第2章における検討結果を踏まえて,本研究において構築するシステムの基本方針を明らかにし,その後で,Proto-Typing Methodと呼ばれる手法により開発されたシステムの機能を使用例とともに示している。
第4章においては,システム開発段階において実施した自治体における試験的利用結果をもとに,システムの実務への適用性及び導入した際の効果について検討を行っている。また,第5章においては,情報処理技術の発展動向を踏まえつつ,システムの改良課題とその改良方向について整理するとともに,システムの普及に関する利用環境整備についての検討結果を示している。本システムは,開発言語並びに機器の制約条件から,主にゾーン数に関してであるが,取り扱い可能なデータ量に制限を受けている。しかし,地方中核都市圏と呼ばれる規模の都市圏の交通計画に際して充分その機能を発揮できることが読み取れるであろう。また,本システムの普及を図ることは,計画業務の効率化を図るという当初の目的に資するばかりでなく,多様なユーザーのニーズを発掘してより使いやすく有用なシステムに改善,拡張していくためにも重要である。
巻末には,資料1として本システムのデータベース形式並びにプログラム構成を,資料2及び3として自治体における試験的利用の際に作成したデータファイル一覧を添付している。これらは,システム内におけるデータ処理の流れの理解と,データベースの構築方針決定にあたっての一助となろう。
本システムの開発は,盛岡市都市計画部,岩手県都市計画課並びに株式会社アルメックの協力を受けて進められたものである。ここに記して謝意を表するものである。
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