■建築研究報告 |
コンクリートを対象とした透過および散乱γ線の防御に関する実験的研究 藤井正一, 関根 孝, 伊藤和男(1) 建築研究報告 No.52, 昭和43年3月 建設省建築研究所 |
<概要> |
われわれの研究所において,「放射線利用施設の設計施工に関する研究」が始められたのは,昭和30年度からである。ちょうど,本邦における原子力開発が本格化するころであった。この研究は,本邦に初めて原子炉施設の建設がなされるに当たって,施設の設計および施工にたいする建築的研究ということであって,当初は各種の問題がとり扱われた。しかし,その多くは次第に研究が終了したが,そのなかの一課題であった「放射線しゃへい材料のしゃへい性能に関する研究」は解決を必要とする問題が非常に多く,現在まで引きつづいて実施されているものである。この課題は,その初期には,主として原子炉施設に使用するコンクリートおよび重コンクリートについての,しゃへい性能,つまり,放射線の吸収係数などを調べることと,重量コンクリートの施工に関する問題であって,これらの成果については,当所の「建築研究報告」第25号(昭和33年3月刊)で詳細に報告した。 その後,この課題の内容は,コンクリートに放射線が入射したときの散乱線にむけられて,引きつづいて研究が実施された・ γ線散乱の現象を解明することが施設設計上必要な理由は,次の3つの点にある。 第1はγ線使用施設での使用時の作業者の被曝量の算定が必要なこと。 第2は,γ線が施設内の壁,天井,床などを,まわって隣接区域へおよぼす影響を防ぐ必要があること。 第3は,γ線源応用上の問題で,γ線利用の実験系自身への影響である。つまり,その実験系の目的を精度よく達成するためには,必要線束以外のものは除くことが望ましい。 これらが散乱線の評価および対策が計画されねばならない理由である。 散乱γ線の研究方法としては
γ線の散乱を光の場合と同様に巨視的観点から計算する方法と光子の運動として確率論的に取り扱う方法がある。
実験的に散乱現象を解明する方法で大別して
とがある。 この報告で述べる散乱線に関する問題は主として(A)の(a)の方法で行ったものであって,研究の進歩するにつれて,その都度2,3の学協会に発表されたが,研究が一段落をつげたのを機会に,ここに取りまとめる次第である。 本報告に収めた内容と研究実施年次を挙げれば
なお,第1章は,序論的事項として,γ線に関する一般的性質を述べた。 これらの研究は,すべて,原子力試験研究費(科学技術庁)によったものである。 |