■建築研究報告 |
コンクリートの品質管理に関する数理的考察 青木 義次 建築研究報告 No.82, 1978 建設省建築研究所 |
<概要> |
ここではコンクリートの圧縮強度についての品質管理上の問題を検討する。コンクリートの圧縮強度については建築基準法施行令において強度試験方法等に言及されているが、必ずしも曖昧な点がないとは言えない。この問題について日本建築学会大会においても昭和51年、52年に研究協議会のテーマとしてとりあげられ、なかでもコンクリートの調合、運搬、打ち込み、養生のプロセスのどの段階での強度を考えるか、すなわち、どの段階で供試体を採取するか、また、採取された供試体をどのように扱うか(4週間強度判定までの養生の取り扱い)という点に関する問題が提起されている(文献1)。 他の工業生産品が向上出荷時点においてその性能をほゞ完全に発現しているのに対し、建設に用いられるコンクリートはいわば半完成品であり、工場出荷以後に大きな変動を伴ってその性能を発現するので、品質管理上の判定には多くの困難がみられる。 一方、コンクリート圧縮強度は建築物の安全性を決める上できわめて重要な役割を果たしており、建築空間の安全を考える際、最も重要なファクターともいえ、その品質管理は非常に重要といえる。以後の分析では、生コンクリートの工場出荷から建築空間の利用時点までのプロセスを種々の不確定要因が混入するランダムプロセスシステムとしてとらえ、安全上の観点から次のような2点を目標とする品質管理システムの最適化を考える。
前者の要請は安全上きわめて重要な要請である。後者は前者の要請のみを考えて過剰に安全設計、施工されることのよって浪費される建築的資源を最少にくい止めようとする要請であり、建築全体を考えた際、この要請を無視して非現実的となってしまう。 以上の点を検討するため、以下では
を行う。 |