■建築研究資料 |
2010年2月27日チリ地震建築物被害調査報告 |
<概要> |
2010年2月27日(土)、現地時間午前3時34分14秒、南米チリの太平洋沿岸部でモーメント・マグニチュード(Mw)8.8の巨大地震が発生し、沿岸地帯には津波が襲来した。地震と津波によって多数の死者、行方不明者が出たほか、チリ国内の広い範囲で建築物や土木構造物にも甚大な被害が発生した。ちなみに、津波は翌2月28日午後から3月1日未明に掛けて日本にも襲来し、太平洋沿岸の広い範囲に避難指示や警報が発令され、各地で最大1m程度の津波が観測された。
地震直後、日本政府は独立行政法人国際協力機構(JICA)の調査団2名を現地に派遣し、復興支援ニーズ調査のため関係機関との協議および現地調査を実施した。その中で、チリ住宅・都市計画省住宅計画局長より日本に対して、被災建物の診断に関して優れた技術と経験を持つ専門家チームの派遣要請があった。また、被災建物の診断作業を行っているカトリカ大学の担当教授からも、診断と調査に関する助言を得るため、日本人専門家チームの派遣を強く要望された。これらの要請に応える形で日本政府はJICAを通じた専門家チーム(以下、JICA専門家チームと略記)の派遣を決定した。独立行政法人建築研究所からは、構造研究グループ 加藤主任研究員、田尻研究員、国際地震工学センター 向井主任研究員の3名が専門家チームに参加し、2010年3月13日〜23日の日程で建物の被害を中心に被災状況調査を行った。 他方、建築研究所も参画して実施している独立行政法人科学技術振興機構(JST)と国際協力機構の地球規模課題対応国際科学技術協力事業「ペルーにおける地震・津波減災技術の向上に関する研究(2009〜2014年)」においては、ペルーの隣国チリで発生した地震災害であることに鑑み現地調査が計画され、建築研究所からは国際地震工学センター 斉藤上席研究員が2010年4月26日〜5月3日の日程で建物被害の詳細把握に参加した。 本報告は、以上の現地調査活動で収集した情報等に基づき、建築物の被害状況を中心に2010年チリ地震の被害概要についてまとめたものである。第2章では、チリ政府や国際機関の公表データを引用して地震被害の全体像について記載している。第3章では、地震観測データの分析によって明らかとなった地震および地震動の特徴、並びに津波の伝搬状況について示している。第4章では、各地で観察された建築物の被害状況について概説し、第5章では今回の地震被害の特徴について分析を行った。第6章においては、チリの現行耐震設計基準の特徴と地震被害の関係について解説している。 |
|