■建築研究資料 |
No.200号(2020(令和2年) 7月) |
<概要> | ||||||||||||||||||||||||||||||||||
現在,既存建築物の増改築工事などにおいて,短期応力を負担する部材へのあと施工アンカーの使用やスラブなどの長期応力下における部材へのあと施工アンカーの適用が望まれている状況において,本研究は接着系あと施工アンカーの安全かつ適切な使用拡大に資する技術的知見を得ることを目的として以下の検討を行った。これらの検討は,主として建築研究所課題「あと施工アンカーを用いた部材の構造性能確認方法に関する研究(平成27年度〜平成29年度)」および国土交通省の建築基準整備促進事業「あと施工アンカーを用いた部材の構造性能確認方法に関する検討(平成27年度〜平成29年度)」として,当該事業者との共同研究として行ったものである。 以下に本検討によって得られた知見を示す。
(1) (1) 接着系あと施工アンカー単体のせん断試験および引張試験等を行い,接着系あと施工アンカーの品質評価のための試験方法(付着強度試験,クリープ試験,引張試験,およびせん断試験)を提案した。
(2) (2) 接着系あと施工アンカーに使用される接着剤単体の物性および品質確認試験を行い,接着剤樹脂の評価項目および評価基準,圧縮強さおよび圧縮弾性率試験方法,接着力試験方法,燃焼試験方法,および耐アルカリ試験方法を提案した。
(3) (3) 接着系あと施工アンカーを用いた構造部材の性能確認試験として,耐力壁およびスラブの構造実験を行い,通常の先付け工法の定着方法によるものと比較して,強度等が同程度であることを確認する実験手法を提示した。なお,耐力壁試験体は,既存建築物の耐力壁に新たに出入り口開口を設ける場合を対象として,開口際の端部曲げ補強筋が周辺部材へ定着する際に接着系あと施工アンカーを用いる場合を想定したものである。一方スラブ試験体は,接着系あと施工アンカーを用いた構造部材の長期性能を確認する一例として,増築等による増床とする場合を想定したものである。
(4) (4) 接着系あと施工アンカーの施工品質を確保するための方法として施工品質管理指針案を提案した。またあと施工アンカーの施工精度が引張・せん断強度に与える影響,および非破壊試験による接着系あと施工アンカーの施工品質評価方法を示した。また,電磁パルス法による接着剤の充填状況の試験方法,および超音波パルス反射法によるあと施工アンカーの埋込み長さの試験方法を提案した。
(5)上記の(1)〜(4)を踏まえ,接着剤の充填方法としては原則として注入方式とし、具体の構造部材に使用した場合を審査対象と定め、品質管理および施工管理まで含めた,接着系あと施工アンカーの強度指定に係る審査基準,注入方式接着系あと施工アンカー審査基準,および注入方式接着系あと施工アンカーを用いた構造部材審査基準の原案を提案した。
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